2005年12月10日

ビールと、友人 Amberg

これは、前回の「逃げてドイツへ」の続きです。

amberg01.jpg


ニュンブルグの空港に降りたつと、大きい会社の看板が目に飛び込んできた。
クラウスと、そしてシュテファンが勤めている会社。ここから彼らは日本に駐在にきていた。
外に出てみると、すねたような顔をしてきょろきょろしているクラウスがいた。
彼は、変わっていなくて、でも東京にいるときよりずっとのびやかな笑顔をしている。

ドイツのアウトバーンを車でとばして、アンベルグのクラウスの家に行く。
クラウスは、何年もつき合っていた彼女と別れたと話した。彼女はスペイン人でドイツの大学に留学していた。クラウスが2年日本に滞在していた間、彼女はドイツで遠距離恋愛をしていた。しかしクラウスはドイツに戻ってすぐ、また何ヶ月か後にカナダへの長期赴任が決まった。ふたりは、話し合って別れることに決めた。これ以上遠距離は耐えられないし、彼女はドイツに残ってそのまま就職したいから彼といっしょには行けない。
「まだ彼女のこと好きだけど、こればっかりはどうしようもないよやっぱ」 クラウスは苦笑いした。

クラウスの家、ここは田舎町、店もあまりないようなところ。
休暇中のわたしたちは毎日、朝からビールを飲んだ。
こころを動かされず、気をあまり遣わないですむ友人といっしょにいれば、ほんとに休まりそうな気がした。

「わたしさ、オランダで会った人を好きになっちゃったみたい」
「ん?」 クラウスは言う。
「でもその人結婚してるんだ。もう会えないかもしれない」
クラウスはやれやれ、というようにため息をついた。
「おまえさ、」
彼はそこで言葉を切ったが、顔には“だからだめなんだよ” と書いてあった。
「俺はね、好きな人には迷惑をできるだけかけない。前にパーティーで会ったキラって子、いるだろ?俺、彼女のこと大好き。もう何年もね。でも、そのこと彼女には言わない。今彼氏といっしょに住んでいて幸せそうだから、迷惑かけたくない」
「ねぇ」 わたしは言った。
「あんたが好きって気持ち言わなかったら、どうやって彼女、わかるの?あんたはどうして彼女が彼氏と幸せだってわかるの?もしかしたらあんたのほうが好きかもしれないじゃない」
クラウスはそれには答えず、オランダの話へと戻した。
「たった何十分しか話してなくて、どうしてそいつのこと好きってわかるの?」
わたしは思いだしていた、ダニーと会った日のこと。彼がカルロスにわたしを送ってくれると言ったあと、わたしはすこし心配だった。見ず知らずの人が送ってくれるって。ダニーに小声で聞いた、「ほんとに彼のこと信用できる?」 彼はわたしをちらっと見て微笑んだ。 「うん、俺の友だちだから」
会ってから何十分しか話さなかった。それでも、信用してた、自然と。

amberg03.jpg


「その彼に、また会ってどうするの?」 クラウスは聞いた。
「え?」
「だから、またそいつと会ったらさ、なにすんだよ」
考えたこともなかった。なにを、する?
彼に会ったらただ抱きしめてしまうかもしれない。それしかできないかもしれない。

でも、このまま日本には帰れない。ここにこころを残したまま、遠い国に帰れない。

わたしは毎日ビールを飲み、買い物に行ったりマックを食べ、たまに来るクラウスの友人と話し、日々多くなり降り積もってゆく静かな雪をみてもの思いにふけった。ときは年末に近づいていった。

続き「過去と現在の恋」へ
posted by ナオカ at 02:50| Comment(5) | TrackBack(0) | 恋愛など | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
私も短期間で一気に人を好きになります。
あんまり長く知り合いだと友達として以外見れなくなってしまうというか、意識できなくなってしまうというか。

>会ってから何十分しか話さなかった。それでも、信用してた、自然と。

ってスゴイ分かります!
男女に限らず。
そう感じる人がたまーにいます。
Posted by さえ at 2005年12月10日 06:53
>「あんたが好きって気持ち言わなかったら、どうやって彼女、わかるの?あんたはどうして彼女が彼氏と幸せだってわかるの?もしかしたらあんたのほうが好きかもしれないじゃない」

ああ、こういうこと、青春期の恋愛の時に私に言って欲しかった・・・・^^;;とってもねいさまっぽい。

ところで、いつもアップされているムーディーな写真はイメージですか?それとも、その時の写真ですか?
Posted by ぶるう at 2005年12月10日 10:55
こんばんは☆
ナオカさんは、自分の気持ちに素直に行動できるタイプなんですね^^羨ましい。
私も最初のインスピレーションで好きだなと思うタイプではあるんですが、その後、恋愛関係になるまでとーっても時間がかかるんですよね^^;;;待ってるタイプ。
だから、相手も気に入ってくれて誘ってくれる場合か、故意ではなく偶然に会ったり話したりする機会がないと、なかなか距離が縮まりません。。。だから、旅での出会いは本当に淡い友情で終わるばかりです。。。逆にまったく恋心もないと長年メールのやり取りが続いたりしますが^^;
でも、ナオカさんみたいに自分から告白&逆プロポーズもありかなぁ・・・今後は!!^^頑張ります☆
Posted by Mon plaisir ☆ at 2005年12月10日 21:23
▽さえさん
>私も短期間で一気に人を好きになります。
あんまり長く知り合いだと友達として以外見れなくなってしまうというか、意識できなくなってしまうというか。

わたしもさえさんに似てるかもしれないです。
はじめに何も感じない人、というか長期間知り合いでいられる人は、友だちという意識しかないかな〜。
これってなんなんでしょうねぇ。不思議ですよね。もしかしたら、出会った瞬間に潜在意識でなにか感じとってるのかもしれないですね。

▽ぶるうさん
>ああ、こういうこと、青春期の恋愛の時に私に言って欲しかった・・・・^^;;

どうなるかはわからないけど、当たってくだけておかないと、のちのちまで気持ちを引っ張ってしまうのかなーって最近思うんですよね。立ち直りも遅くなるというか。
わたしの場合、それに気づいてからはとにかくくだけるの覚悟で当たるようになってます^^;
aluさんとはどうだったんですか〜〜〜〜??←しつこい?

▽Mon plaisir ☆さん
旅で出会った場合は時間勝負ってとこありますよね。
Mon plaisir ☆さんは待たれる方なんですね。わたしは、待つのがすごく苦手で待ってられないので当たってしまうんですよね〜。
男の人も、「待つタイプ」ってけっこう多いのかな?って思うんですよ。自分からは言えない、とか。
お互い好きだったとしても、どっちも言わなかったら距離が開いてしまいますよね?
好きな人の前だと「自分なんて・・・」と自信がなくなってしまうのですが、好きと思ったらやっぱり素直に言うのが一番ですよ!
自信のない男性に代わって自分から言ってあげれば、男性のほうもラクになると思います。もちろん、くだけちる危険性も50%あるのですが・・・

この間セバに、「もしわたしがプロポーズしなかったらいつ結婚してたかな?」って聞いたら、「僕が決めたとしたら、出会ってから2年後ぐらいになったかな」って言ってました。そんなに待ったのか〜と思うと、先に言っておいてよかったかも!なんてことも思っちゃいました^^;
長くなってしまいました。また遊びに来てくださいね!^^
Posted by ナオカ at 2005年12月11日 04:40
▽ぶるうさん
>ところで、いつもアップされているムーディーな写真はイメージですか?それとも、その時の写真ですか?

ム、ムーディー・・・^^;;;
そのときに撮った写真です^^
Posted by ナオカ at 2005年12月11日 05:51
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