2005年12月06日

トビーとの再会 London

これは、「東京での外国人との恋愛」の続編、それから1年後の旅のお話です。

London01.jpg

久しぶりのロンドン。クリスマス前のピカデリー・サーカスのウィンドウは色とりどりの飾りがきれい。
トビーと約束した「bank」でチューブ -地下鉄-を降りた。公衆電話から電話する。ポンドをまだ引き出していなくて、コインがなく、電話をするのにも一苦労。Bankはロンドンの金融の中心である場所。冬であるからか、街行く人はみな、お葬式に行くような格好。そろいもそろって真っ黒。黒いコートが、灰色で赴きのある建物に映えて、なんだか死者の街みたい。
しばらく待つと、背の高い建物のあいだから、これまた黒いコートをひっかけたトビーがあわられた。
「Hi!久しぶり、ナオカ!」
寒くて暗いロンドンの街でも、その笑顔はあたたかくて、あたりを照らす黄色い電灯のようだ。
「待った?」
彼はそう言って、わたしの大きなスーツケースを引き、地下鉄の駅へとうながした。
地下鉄の中に入ると彼は、かちっとしたスーツ姿におよそ不似合いだったリュックを肩から外し、
「はい、これ。ロンドンでは必要だからね」
とわたしに小さく折りたたんだ傘を渡す。それから、使い古されてそうとう傷んだロンドンのCity Mapも。
「わたしロンドンはじめてじゃないよぉ」と言って笑う。
「ごめんね。本当は俺がいろいろ連れてってあげればいいんだけど、仕事休めなくてさ」
「いいよいいよ。ひとりで歩くの好きなんだ、わたし」
トビーの住むArsenalはサッカーチームで有名なところ。ロンドンのチューブで主要なピカデリーラインで一本である。
駅からしばらく歩くと、通り沿いの一軒家にトビーの住む家がある。
大学を出てしばらく放浪の旅に出、1年前からロンドンで働きだしたトビーは、この家を4人の若者とともにシェアしていた。

家に入る前に、路上に停めてある、最近買ったばかりという黄色の古いスポーツカーをわたしに自慢げに見せるトビー。
「古いんだけどね、これ」
と言いながら、ポンコツの愛車をとてもいとしそうに撫でた。
London03.jpg

トビーの家のリビングルームにスーツケースを置いてから、彼は近所の地中海料理の店にわたしを連れて行った。
「ロンドンだからさ、おいしいかどうかわかんないけど」
そう言うトビーがかわいらしくて、わたしはついつい食べ過ぎてしまう。
味、悪くないよ、おいしいよ、というと彼は照れくさそうに笑った。

それからふたりでパブに繰りだす。
大きいギネスのジョッキを頼み、再会に乾杯した。
「いやー、ナオカから突然連絡あって、びっくりしたよ。あれ、何年前だっけ?会ったの」
「もう2年前だね。6月だったから、正確には2年半前かな。でもびっくりしたよ、トビーがこんな格好してるなんて」
わたしはそう言ってスーツ姿で今では銀行員になったトビーを冷やかす。トビーは恥ずかしそうに笑う。
「タイで会ったときは、俺どんな格好してたっけ?」
「いっつも上半身裸で、下は海水パンツ」
「わぁ、今から考えたら夢みたいだな、それ」
わたしたちは、当時を思いだし懐かしさにひたる。

2年前にタイに旅行したときに出会ったわたしたち。一泊100円ほどの安バンガローにみな隣りあわせに並んで泊まった。イギリス人のトビーと、オーストラリア人のアンディ、カナダ人のピーターと、もうひとりのイギリス人女性レナ。
バンコクからサムイ島に飛行機で飛び、スラ・ターニーからパンガン島へ行くには飛行機がないので船を使わなければならない。会社の短い休暇をとってひとりで来ていたわたしは、目的地にたどり着くまで2泊もひとりでうんざりしていた。ひとりっきりをさみしく感じていたときに、乗った船で声をかけてくれたのがアンディだった。
「コンニチハ」日本語が聞こえた。異国の地で会う外国人が、自分の母国語を話せるってどんなに心強いものだろう?よかったらいっしょに周ろうよ、俺たちもこの間出会ったばかりなんだぜ、と誘ってくれた。

年中暑いタイのビーチで、わたしたちは毎夜開かれるパーティーで踊り、南国の甘いカクテルを飲み、夜の海辺を散歩した。
5日間しか時間のなかったわたしは、旅を続けるみなに、また会おうね、と約束し連絡先を交換した。

そして今回わたしは、数週間のクリスマス休みをとって、イギリスとオランダに行くことを決めた。
久しぶりのヨーロッパにわたしのこころは浮かれた。ロンドンといえば・トビーのことを思いつきメールしてみると、すぐに返事がかえってきた。もうホテルはとったの?まだとってないなら、俺のフラットに泊まりなよ。リビングルームは広くないけど何日でも泊まってっていいよ、そう言ってくれる彼の申し出がうれしくて、素直にお言葉に甘えることにしたわたしだった。

続き「ドイツからの一通のメール」へ
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2005年12月04日

決別と新しい旅へ

これは前回の「別れの予感」の続きです。

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クリスマスがせまってきていた。

シュテファンからは、ドイツから別の男友だちが日本に来ている、
家は3人いて大変なことになっている、とメールがきていた。

ある日、別のドイツ人グループの友人から、シュテファンやリーダー役のドイツ人たちが、クリスマスに旅行を計画していることを聞いた。
今まで、わたしに教えられないことはなかった、楽しそうな予定。

それを聞いたとき、はじめて、わたしの中から怒りというものがこみあげてきた。

カラオケで、わたしの前でほかの女性と仲よくしていた彼。
わたしに、旅行の予定を教えなかった彼。
今まで友だち面していた周りのドイツ人も、わたしにはその予定を教えなかった。
シュテファンを含め、みんなが信じられなくなりそうだった。


リーダー役のドイツ人は言った。「悪いのは全部シュテファンだよ。おまえはそんなことできるやつじゃないって俺、言ったのに!」彼はシュテファンを悪者にした。
しかしわたしには、そうすることで彼はわたしを慰めているように見えた。


家には彼女がいる。電話はできない。わたしはシュテファンにメールをした。

"Why you don’t tell me about the plan? You should better tell me. Because we are still friends, right? You shouldn’t hide the schedule from me."
どうして旅行の計画のことをわたしに教えてくれなかったの?わたしに言うべきよ。だって、わたしたちはまだ友だちでしょう?隠すべきじゃないわ”
わたしははじめて強い口調でシュテファンに言った。

"でも、きみが傷つくと思った"
その言葉は、さらにわたしの気持ちをさかなでた。勝手に決めないで!

"きみは平気だと言った。なのに今傷ついている。どうして?"
わたしたちは言い争った。

"教えてよ。あなたは「遊ばない」って言ったじゃない!わたしはあなたのなんなの?"
彼ははっきりとは答えなかった。
"No more love, I become homo that is better" これ以上の愛だったら、僕はホモになったほうがましだ。

なにをされても、言われても、ただ、傷つくだけの自分がそこにいた。
怒っているのに、なぜか涙があふれていた。
結局、わたしたちはお互いに、気持ちをぶつけ合うにはあまりに臆病すぎたのかもしれない。


大晦日の日、リーダー役のドイツ人は、レキシントンクイーンでおこなわれるカウントダウン・パーティーの司会をやることになった。俺の晴れ舞台を見に来て!とわたしは強制された。
そのときは何十人もの人がきた。ほかにも気のおけないたくさんドイツ人の友人が来る。わたしは行った。
そこで、彼女と、ドイツの友人と3人で来ているシュテファンをちらっと見かけたのが最後になった。

その後、わたしは、シュテファンとつながりのあるドイツ人関係の連絡を一切絶った。
好きな人と、友だちを一気に全部失った気がしたけれど、
わたしのこころのどこにも、もう彼のことを信じられる隙間はなかった。
わたしにできたのは、ただただ、彼を思い出さないようにすることだけだった。


年が明け、4ヶ月ほど経ったころだったろうか。メールボックスにシュテファンからメールが届いた。
一行の短い文だけ、そこには、
"I was wrong for everything. I’m sorry." 僕がすべて悪かった。許してくれ。
その言葉は、わたしのこころに響くにはもう遅すぎた。


夏になった。わたしは、はじめてとれたフリーの大きな仕事に夢中になった。
そのころ出会った男性と適当に会い、ときには体も合わせた。


秋口になり、シュテファンの話を知人から聞いた。
シュテファンは、わたしが去りしばらくして、みんなの集まりに参加しなくなっていた。そして、彼女とも時を同じくして別れ、彼女はひとりでドイツに帰ったと。
そのとき、自分がどう思ったかは、覚えていない。


わたしはその年の冬、フリーで稼いだお金をもとに、新たな旅をはじめることにしました。
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2005年12月03日

別れの予感

これは前回の「彼の苦悩が見えるとき」の続きです。

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シュテファンとわたしは、富士五湖に、レンタカーを借りて行きました。
パラグライダーが好きだったシュテファン。“空を飛ぶこと” と言う彼。
1泊2日のふたりだけの小さい旅行。彼とほんとうに恋人どうしになった気がした。
“うまく飛べないときはね、鳥の真似をしてみるんだ” という年上の彼が、わたしの知らないことをたくさん知っているようで、まぶしく見えた。
あとで、デジカメで撮った旅行の写真をWebページにアップした。シュテファンや、ほかの友だちが見れるように。
すると、シュテファンはうれしくて、そのWebページをドイツの彼女に教えてしまったよう。写真の中にはもちろんわたしも映っていました。
シュテファンと彼女は、ドイツで、趣味のパラグライダーを通して知り合ったと聞いていました。日本で、富士で飛んだ写真を自慢げに見せたかったのかもしれない。
そのことを、あとで、リーダー役のドイツ人の友人から聞きました。「シュテファン、バカだよね。マリタにばれちゃったよ。ナオカのこと」
シュテファンはわたしにはなにも言わず、でも暗い顔をする日が多くなっていました。

彼が、わたしと彼女の板挟みになり、考え、思い悩んでいるようなのを見ると、うれしいと思う自分もいた。
"You are sweet, you are cute, but not only it... nice.."
そう言って少し恥ずかしそうににっこり笑う彼を見ていると、疑うべき理由は何もない気がした。彼は嘘を言っていない。それは、これから先のわたしや彼の状況には関係なく、ただ、今いとしいと感じる気持ち。
彼は何も悪くない。ただ、いつでも、素直なだけ、自分の気持ちに。
わたしは、本当はもっと出したい、素直な気持ちを、彼の前でセーブしていました。彼に対して沸きあがってくるいとしさ。彼は気づいていただろうか。

そして、なるべくシュテファンのみに集中しないように、仕事をがんばったり、シュテファンのグループとはあまり関係のないドイツ人の男友だちと遊びにでかけたりした。


12月に入り、シュテファンの彼女が来る日がせまってきました。
シュテファンとわたしは、そのことについては無言のまま、彼女が来る前日、東京国際展示場のEXPOにいっしょに行った。
明日、彼女が来る。もうふたりで会うことはできないだろう。
わたしは暗くなりそうな気持ちを隠し、明るく笑っていたと思う。
いっしょに恵比寿に帰ってきて、最後に別れるときも、いつものようにふつうに別れた。なににもふれず。


彼女が日本に着いた週の土曜日、いつものようにドイツ人グループでの集まりがあった。
行こうかどうしようか迷った。でも、EXPOにいっしょに行った日以来、シュテファンとはメールもしていなかったので、彼のことが気になった。
それに、きっと、いっしょに来るであろう彼女のことを、見てみたかったという気持ちもある。どんな人なのか。
ドイツ人のリーダー役からはいつものように、何時に、どこね、という連絡が入った。
グループはほとんどドイツ人だらけ。わたしはひとりで行く勇気をもてなくて、女友だちに声をかけた。それまでも何度かこのグループの集まりに加わっていた友人ふたりが来てくれるといった。
わたしはふたりの救援を盾に、六本木へ向かった。真っ赤なズボンをはいて。明るく、元気に見せかった。

わざと遅れて、夕食はパスし、カラオケの店に向かう。あらかじめ聞いていた番号の、小さめの部屋に入る。10人ぐらいのドイツ人の中に、すぐにシュテファンと、
その隣りに写真で見たことのある女性が座っているのが見えた。

そのときのことはあまり覚えていない。
横に座る女友だち2人が、いっしょうけんめいわたしに話しかけてくれていたこと、
一週間前まで、わたしがいた、シュテファンの横に、ちがう女の人が座っていること、
シュテファンが、その女性と仲よさそうに見つめあい、彼女の背中をやさしく撫でていたこと。
こんなに近くにいた彼が、ぜんぜん知らない人のように見えた。

続き「決別と新しい旅へ」
posted by ナオカ at 21:45| Comment(9) | TrackBack(0) | 恋愛など | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

彼の苦悩が見えるとき

これは前回の「はじめて迎える朝」の続きです。


わたしたちは、その後もよく会った。
半分はグループで。半分は、ふたりで。
わたしは、いつのまにか、前のイギリス人の彼氏とは自然消滅していた。
シュテファンは、以前よりもっとやさしくなった。以前は仕事中にはメールを送ってこなかったのに、会社で気づくと彼からのメールがきている。“今日は忙しいから明日会いたい”

それと裏腹に、
彼と話していると、“ファーストはドイツ”という言葉がたまに出てくる。
周りの女友だちは、やめなよ、彼女がいる人なんて。あの人遊んでるだけじゃない、とわたしに忠告した。
グループのドイツ人は、わたしたちが仲よく話すのを見てみないふりをするか、冷やかした。

それでも、シュテファンの態度を見ていると、彼の言葉よりも気持ちが伝わってくる気がした。
いっしょにいるとき、わたしが携帯を見ていると、彼はなに〜〜〜?と言って、だめ、と隠そうとする。わたしの携帯を見て、“他の男からじゃないかチェック”と言う。
そんな彼の小さな言動も、わたしにはうれしく思えた。
彼はわたしのことを、冗談ぽく“セカンド”とよく言った。そう言われることに、わたしもだんだん慣れていった。

シュテファンの彼女は、12月にドイツでの仕事を辞めて、日本にいる彼のもとへ来ることになっていた。

ある夜、シュテファンと待ち合わせをしてごはんを食べに行った。
彼は口数が少なく、顔も浮かない。
どうしたの?と聞くと、はじめは話さなかったが、彼女のことだった。
彼女はいつも何が起こっているか、何があったか、を聞く、気にする。彼は苦い顔でそう言う。
最近わたしとばかりいたシュテファンは、態度が変だと思われてしまったのかもしれない。
彼は元気がなく、苦悩している顔をしている。
そんな彼に、わたしはなにもいえなかった。だいじょうぶよ、って。わたしは元気な顔をして、悩む彼をラクにしてあげられる、ことをいうしかなかった。
シュテファンに「深く考えすぎないで、だいじょうぶよ。自分に素直でいれば」
そんなことを言いながら、自分で自分をコントロールしていた。彼がすべてにならないように。傷つかないように。
そして同時に、信じたかった。彼のなかで、セカンドがファーストになるかもしれない。
“But I want to see you” でもきみに会いたいよ、そう言う彼の気持ちは自然なものだ。
彼女が日本に来るまであと2ヶ月。まだ、この先どうなるかわからない。

こんなこともあった。
ある土曜の夜、いつものようにみなで六本木でごはんを食べ、クラブへ行った。
通常のわたしたちのコースはその後カラオケ、深夜2時ごろレキシントンクイーンという順だった。
その日のシュテファンは、はじめは普通、いつもの彼にみえた。
いっしょに踊っていると、彼は突然わたしの体を突き放した。その仕草が荒くて、びっくりして彼を見上げると、つらそうな、彼の顔が見えた。
涙さえ浮かんでいたかもしれない。わたしは何も言わなかった。

しばらくしてシュテファンの姿がみえなくなった。グループの別のドイツ人に聞くと、シュテファン、帰ったよ、と言う。嘘だ、と思った。今までいつもいっしょに来て帰っていたのにわたしになにも言わないで帰るの?
わたしは店をでようとした。ナオカ、行かなくていいよ!と後ろから何人かのドイツ人が叫んでいるのが聞こえた。わたしは叫び返した。シュテファンの自転車ないか、見てくる!
その日わたしたちのバイクと自転車を停めた場所へ走った。シュテファンの自転車がない。
わたしはバイクに乗ってまっすぐシュテファンの家に向かった。
マンションはオートロック。エントランスからシュテファンの家のチャイムを鳴らす。・・・出ない。駐車場にバイクを見に行く。シュテファンの自転車は置いてある。ほっとする。帰ってるんだ。またチャイムを鳴らしてみる・・・出ない。
携帯が鳴る。シュテファン?と思ってすぐに出ると、まだクラブにいるドイツ人の友人。「ナオカ、今どこ?」心配している声。「シュテファンの家の前」「シュテファンは?」「チャイム鳴らしても出ないの」
「・・・ナオカ、いい?今夜はもう遅いし、寒いから今すぐ家に帰りなさい」
友人のことばがあたたかくて涙があふれた。
「でも・・・」
「ナオカ。シュテファンはだいじょうぶだから。俺からも連絡とるから。すぐに帰って」

こんな、人から心配されるような行動をしたことはなかった、シュテファンは。
わたしは、彼が苦悩しているのかもしれない、と考えた。
なにも言えるわけない、どうして責められようか、彼を?


わたしたちグループは、恵比寿のDickensというジャズバーによくみんなで行った。
11月になり、彼女が日本にやってくる日が近くなってきた。
そんなわたしの不安が顔に出ていたのか、グループのドイツ人女性、ウタが話しかけてきた。
「ナオカ、シュテファンとはどうなっているの?」
「わからないの」
「マリタとはね、シュテファンはもう2年いっしょに住んでいるのよ。2年と、出会っから2ヶ月のナオカ。それじゃ、ちがいすぎるでしょう? シュテファンも迷ってる。
あなたは楽しんで。彼のことばかり考えないで、あなたが楽しんで」
わたしよりも5つほど年上で、既婚者のウタに言われたことは、わたしを涙ぐませた。
でも、楽しむってどういうことだろう?その言葉は、無責任なものにも響いた。

シュテファンは、暗い日もあったが、あいかわらずやさしく、わたしたちはよくいっしょにいた。

彼は、ドイツから彼女が来る、準備を気持ちのなかでしてきているようだった。

わたしも、しだいに、シュテファンから離れる、気持ちの準備を自然とはじめていたはずだった。

続き「別れの予感」へ
posted by ナオカ at 01:20| Comment(5) | TrackBack(0) | 恋愛など | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年12月02日

はじめて迎える朝

これは前回の「初めて踊った夜」の続きです。


シュテファンの家に入り、わたしたちは玄関でまたキスをした。

わたしはシャワーを浴びることになり、でもその間、彼はどういうつもりなんだろう?と考えていた。
彼が六本木の交差点で言っていたこと、わたしは理解していないので、彼にもう一度聞こうと思った。
シャワーから出てくると、彼はもう裸でベッドに寝ていて、わたしを見てにっこり笑いながら、"服を着たんだね。必要ある?" と言い、リビングのほうにきてわたしを抱きしめた。

"わたし、わからないの"
と言うと彼は、

"I like you very much. I don't know what's happened. But I love you, you're attractive, intelligent, very nice"
きみがすごく好きだよ。なにが起きたのが自分でもわからない。
でも、愛してる。きみは魅力的で、頭がよくて、とてもすてきだ。

わたしがでも、、と躊躇したような顔をしていると、彼は少し眉間に皺を寄せて、

"Maybe later I tell Malita. You won't be a second woman..."
たぶん、あとでマリタに言う。(マリタはドイツ人の彼女の名前)
きみは、2番目にはなりたくないんだよね...

わたしは "No" と言った。嫌だ、2番目なんて。

"きみは自分の気持ちがわからない?"
"自分の気持ちはわかる" そう言うと、

"じゃあ迷うことないじゃない?"

彼は、にこっと笑ってわたしを抱きしめた。
わたしはまだ納得していなかったが、あきらめました。
とにもかくにも、彼に抱かれないことにはもうおさまらなかったのです。

大丈夫、彼は遊びでつき合うような人じゃない。
彼の気持ちを信じようと思った、というか自然に信じてしまったのか。信じたかったのか。
彼の、わたしを思う気持ち。それを。


シャワーを浴び終える彼をベッドで待った。
真新しいベッド。真っ白なシーツ。ブラインドの隙間からこぼれてくる、朝の、弱い光。
理屈やかたち、それよりも、わたしはこの瞬間を待っていたのかもしれない。

彼はたくさんのキスをしてくれ、ずっと笑ってた。
わたしも彼につられて微笑んでいた。

彼はベッドの中で I love you, と何回か言ってくれた。わたしも彼を感じながら
I like you, so much を何度か言った。彼は自分はもっとだよ、と微笑んだ。

・・・これは夢?夢じゃないよね??
高揚し、まだアルコールが回っている頭の中で考えていました。



次の日は日曜日。昼すぎまでわたしたちは寝て、いっしょに朝ご飯を食べました。
フランスパンと、紅茶。
彼の携帯が鳴る。彼は別の部屋に行き、しばらくしゃべっていた。話し方から、ドイツ人のリーダー役のやつだな、とわかった。

彼は戻ってくると、やっぱりそうで、あの後どうなったのか聞かれた、と笑って言う。
みんな見てたみたいだね、僕たちのセクシー・ダンス。みんな、あの後ふたりがどうなったのか気になってるみたい。キスしたの見てたみたいだよ、と言うので、わたしはすごく恥ずかしくなり、言葉を失った。
みな、シュテファンにドイツの彼女がいることはもちろん知っている。
いいんだろうか?
でもシュテファンはいつもの自然な彼で、ふつうに話す。
だいじょうぶ、と言って。
なんて答えたの?と聞くと、We went to our home−僕たちは僕たちの家に帰ったって言ったよ、わざと曖昧にね。でも彼はわかってるね。もしそれぞれの家に帰ったと言っても、誰も信じないな、と言うのでそうかも、とふたりで笑った。

彼と居るといつも笑っている。軽くない話、なんにしても、同じ重み、同じように彼は普通に話す。とても自然に。だからわたしも真剣にならずに笑って話せるのだ。


彼とやっと深くつながり、彼もわたしと同じ気持ちでいてくれているようだとわかった。
そんなうれしいはずのできごとなのに、
どうしてか、こころの底からは喜べないでいるわたしがいました。

続き「彼の苦悩が見えるとき」へ
posted by ナオカ at 00:19| Comment(8) | TrackBack(0) | 恋愛など | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年12月01日

初めて踊った夜

これは前回の「悲しい恋の行方」の続きです。


わたしたちグループがその後よく行った六本木のクラブ、レキシントンクイーン。
リーダー役のドイツ人がマネージャを知っているらしく、音楽もいいクラブだとは聞いていました。
照明がよく、いくつもの部屋に分かれていて、簡単な軽食をとることのできる小さいレストランもあります。

シュテファンは、みんなやわたしとしばらく踊ってから、他のドイツ人とバーのほうに行ってしまいました。
わたしもカクテルを買いに行き、それからしばらくして
“Don't you wanna dance?”−もう踊らないの?と聞くと
“一緒に?”と言うのでうなづくと、シュテファンは踊る、と言って一緒にダンスフロアーに戻りました。

はじめみんなと一緒にいたけど、だんだんかなりぴったりと踊り、なんかこのままふたりでどこか行っちゃっても・・・みたいな雰囲気。
わたしは酔っぱらっていたのもあり、気持ちいい音楽、とても惹かれている人との密な接触、気分はどんどん高揚していき、彼に惹かれる、抑える気持ちがもう止まらなくなりそう。
彼のほうを少し向いて踊り、少し抱きあい、一度キスをしました。チュって、軽いやつ。どちらからともなく。

朝の5時ごろ、その日日本に着いたばかりだと言うドイツ人カップルが帰ると言い、シュテファンと他のドイツ人ひとりが表に出ると言うのでわたしはみな帰るのかと思い、いっしょに外へ出た。

シュテファンは彼らをタクシーに乗せたあと、もうひとりのドイツ人と3人で駅のほうへ歩き、地下鉄に乗るそのドイツ人を見送った。
当時、わたしはバイク、シュテファンは自転車で六本木まで連れチャリしていたわたしたち。
バイクは置いていって彼がチャリを押して歩いて帰る、そんな話をした。わたしはまだ酒もまわっているし運転は危険。

六本木駅前の交差点、まだまだ人の賑わう、車の通りの多い場所。
彼はとても優しくにこーっと笑い、わたしの目をまっすぐに見つめた。
抱きつきたくなって、どちらからともなく抱擁する。
そこでわたしは彼にキスをした。初めての、ちゃんとしたキス。彼が言った。微笑みながら。
"Do you want to come with me?" 僕といっしょに行きたい?
"うん"

"You know, I have a girlfriend in Germany. I won't play.
But I can take you, because I like you so much."
知ってるよね、僕はドイツに彼女がいる。僕は遊ばない。
でもきみを連れていける。だってきみをすごく好きだから。


わたしははじめ、"I can't take you" きみを連れていけない、と言ったのかと思っていた。今までの流れからいって、好きだけど彼女もいるし、遊びはしたくない、そう言っているのかと。それに、"take you" のtakeの意味もよくわかりませんでした。

でも、彼は帰りにずっと手をつないでいてくれたのです。離しても、また彼から。
六本木から、わたしたちの家がある恵比寿まで、オレンジのライトに照らされた青山通りをふたりでゆっくり歩いていく。
わたしの頭は混乱していました。

家の方角が同じわたしたちは、その日も途中までは行くけれど、いつものように別々の家にもちろん帰るのかと思っていました。

しかし、彼は自分の家のほうに、わたしの手を引いたまま行くので、ん?わたしも?と聞くと、彼はちょっと戸惑ったように、"If you'd like" もしよかったら。

わたしはまだ彼の考えがよくつかめず、でも、うん、と言って一緒に彼のマンションのエントランスへ入りました。エレベーターで彼を見上げると彼はキスをしてきました。

続き「はじめて迎える朝」へ
posted by ナオカ at 00:25| Comment(4) | TrackBack(0) | 恋愛など | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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